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「孤独な笑みを 夕日にさらして 背中で泣いてる 男の美学」
ルパン三世のテーマソングの一節です。ちょっと大げさですが、「美学」と聞くとこの歌を思い出します。
美学をもって、ホームページを作る。
と言うと堅苦しく聞こえるかもしれませんが、要するに「どういうこだわりを持って作るか」ということ。
例をひとつ。富山の老舗和菓子屋さん。約150年の歴史を持ち、味も技術も折り紙つき。すすめられてホームページを作ったところ、お客さんが殺到しすぎて、早々にホームページを閉じざるを得なくなったそうです。便利さと引き換えに、日常が壊れてしまった。ここには「ないことの美学」がありました。
ホームページは便利です。欲しい情報は一瞬で手に入るし、ECなら誰とも話さず商品が届く。とても快適です。けれど、その便利さと引き換えに失われたものもあります。
思い出してみてください。まだホームページがなかった時代。初めて入る洋服屋に足を踏み入れるときの、あのドキドキ。雑誌で見た洋服が並んでいるかもしれない、どんな対応をされるのか分からない──そういう緊張を超えた瞬間の「仲間入りした」感覚。あれはひとつの通過儀礼であり、体験そのものでした。
今は多くの場合、ホームページで半分は知った状態で訪れます。心理的障壁は下がり、安心して企業やお店に行ける。その代わり、扉を開けた瞬間にしか得られない「未知との遭遇の感動」は薄れてしまった。レジに持っていくときのヒリヒリ感も、ECでは味わえません。
つまり、ホームページには「便利さの美学」があり、同時に「ないことの美学」もある。どちらを選ぶかはその会社の流儀です。だからこそ大事なのは、単に情報を置くのではなく「どんな美学で作るのか」。凛としたしつらえで迎えるのか、遊び心で驚かせるのか。その選択がブランドの顔つきになるのです。
言葉を開発するコピーライターも、その会社の美学を翻訳しています。余白をどう使うかに悩むデザイナーも、美学を形にしています。ホームページのキャッチコピーやキービジュアルは、単なる飾りではなく「私たちはこういう会社です」と表明する旗印です。
ブランディングは「美学イング」とも言えますね。自分たちらしさを見つめ直し、その美学をどう表すかのプロセスです。
最後にもうひとつ。美学といえば、男の美学、といえば、やっぱり寅さんは外せない。
「男というもの つらいもの 顔で笑って 腹で泣く」
AI TAKASHIMA
KEIRO NISHI