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手を動かすことで見えてくるもの

#11

デザインの議論は、ときに長く続きます。コンセプトをどう言語化するか、ビジョンをどう打ち出すか。もちろん大切なことですが、言葉の上でぐるぐる回っているうちに、時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。

そんなときに力を発揮するのが、「手を動かす」ことです。つまり、まずは形にしてみる。ホームページ制作においても同じで、延々と議論するより、ひとつモックアップをつくってみた方が話が早いということもあります。

前回ご紹介した私たちが社内で大切にしている考え方「DDD」

  • design(意匠としての見た目)

  • Design(設計としての構造)

  • DESIGN(課題解決のプロセス)

どれかひとつに偏ると、たちまち不均衡になります。見た目だけ追えば「映える」けど伝わらない。設計だけ重視すれば、便利だけど面白みに欠ける。課題解決に寄りすぎれば、合理的すぎて血が通わない。大切なのは、この三つをどう行き来しながらつくるか。

その接着剤の役割を果たすのが、モックアップ(MOC)です。お客様にとって、キービジュアル単体やムードボードだけでは想像が難しいことが多い。普段デザインに触れ慣れていない方にとっては、イメージの補完が必要だからです。実際のWebサイトに近い形に落とし込んで見せることで、初めて「こうなるのか」と腑に落ちる。その瞬間に議論が一気に進むことも少なくありません。

ホームページは無限に拡張できる媒体です。だからこそ最初に「枠」をつくることが重要です。ここで言う枠とは、予算や納期といった制約だけではなく、「何を伝えたいのか」という目的の明確さ。プロトタイプをつくることで、その目的に照らして「合っている」「違っている」を判断しやすこともあります。

江戸時代、「町民は茶色や鼠色しか着てはいけない」というお達しが出たとき、人々はその枠の中で草木や染料など工夫を凝らし、四十八茶百鼠と呼ばれる100種類以上におよぶ多彩な色のバリエーションを生み出し、自己表現や粋を追求しました。同じように、ホームページ制作でも「枠」を設定することで、ブランドのらしさが研ぎ澄まされ、より鮮やかに浮かび上がります。

「手を動かすことで見えてくるもの」。言葉より先に、議論より先に、まずは試す。その積み重ねの先に、ブランドの思想を体現したホームページが仕上がっていくのも一つの方法です。

RYO NAKAGAMI
AI TAKASHIMA