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金沢慕情とホームページ

#14

コーポレートサイトもリクルートサイトも、デザインやコンテンツが均質化してしまった今、情報は取りやすいようでいて、ユーザーにとって結局どれも似たり寄ったりで区別が難しい。

「サービス紹介」「会社概要」「お問い合わせ」。どのホームページにも一定の「型」があり、使いやすさや情報は担保されても、最後に人を動かす感情”にふれる、言葉、写真、レイアウトはもちろん拘れど。もっと曖昧な“におい”のようなものを醸すことはできるか。

もちろんホームページから「におい=香り」を体験できるところまでは、技術は至っていない。

この「におい」について考えていると、ある海外のカメラマンが撮った石川県の酒蔵のドキュメンタリー映像を思い出す。映像は驚くほど日本的、おそらく日本人が撮るよりも“日本らしさ”が濃厚に立ち上がっており、初見で海外の人の作品だろうと嗅ぎ分けられる。

においを醸す要素の一つはそのディテールだろう。異文化の眼差しが日本文化の輪郭をくっきりと際立たせることがある。自国の私たちにはあまりに当たり前で、気にも留めなかったものが、外から見ると細かな粒度での異物であり、作品のディテールにまで反映される。その集積があの独特の「におい」を放つように思います。かのサブカル系文化人がザ・ベンチャーズの「京都慕情」が、どの邦人作曲家よりも“京都らしい”と評したように。

そう考えると、金沢のホームページは海外のデザイナーさんと一緒に作ってみてもよいのかもしれません。さらなる観光インバウンド需要を見据えるなら、訪れる人が「こういった日本を体験したい」と思う表現やコンテンツは、彼ら自身の感覚でデザイン、制作した方がユーザーが求めるものとなるのではないか。もちろん逆もしかりです。私たち日本のデザイナーが海外のホームページを企画、デザイン制作する。均質化した夫々のデザイン”の中で、もう一歩違うにおいを放つには、異文化の視点を混ぜ「輪郭を炙り出す」のはよいのかも知れませんね。

自国の制作者が自国民向けに、自国の常識で作り続けてきたからこその均質化。その“正しさ”をいったん脇に置いて、異物と混じる。そこで立ち上がる「におい」は、均質の海に漂う中で人を惹きつけるシグナルとなるかもしれません。

KEIRO NISHI
AI TAKASHIMA