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余白に宿るメッセージ

#13

ホームページは、トップページから始まって下層へと肉づけされていきます。トップが全体の世界観を示す看板だとすれば、下層はその看板を裏付ける具体的な舞台。実際に作っていて感じるのは、トップの設計が下層の居心地まで左右するということです。

たとえばスマートフォン。アクセスの大半は今やPCではなくSPから。縦長の画面でどう見えるかを想像できるかどうかで、体験の心地よさは大きく変わります。ページを「めくる」感覚はなく、延々とスクロールが続く。だからこそ「ここで一息」「ここで強調」といったメリハリが大事になる。そのリズムを仕込むのも、トップページの設計から始まります。

トップページにはしばしば“隠れたメッセージ”があります。色の組み合わせや写真の大きさ、余白の取り方──それらには「この情報は目立たせたい」「この声は大きく伝えたい」といった暗黙の意図が込められている。次に下層を担当する人は、打ち合わせだけでなく、そのサインを読み取り、解釈し、展開していく。制作はリレーです。トップを組んだ人が残した“トリセツ”をどれだけ読み取れるかで、その後の仕上がりは変わってきます。

こうしたメッセージをどう汲み取り、どう広げていくか。そこには「機能美」と呼べる要素があります。機能美とは、使う人にも作る人にも「なるほど、こうすれば気持ちいい」と思わせる合理性や整合性。余計な装飾をそぎ落としたデザインは、自然と次の展開の道しるべになります。ホームページにおいては、見やすさと心地よさが両立したときにこそ“使える美しさ”が立ち上がります。

余白は、ただの空きスペースではありません。そこに込められた気遣いやニュアンスを読み取れるかどうか──それがトップページから下層へとつながる「気持ちのいい体験」をつくる鍵になるのだと思います。

AYUMI KOSHINO
AI TAKASHIMA