ARTICLE
記事
記事
水族館が好きだ。先日、北海道札幌市に新しくできたとうわさの水族館を訪れた。すすきのからほど近い、商業ビルの中にある都市型水族館であるということ、「AOAO」という名前くらいしか前情報を持たずに訪れたのだが、足を踏み入れた瞬間に脳みそを撃ち抜かれたような衝撃を受けた。
「地球上で青々と繁茂する多種多様な生命のように。
AOAO SAPPOROは、海や川の生物と私たちの暮らしが
生き生きとつながり合うありかたを探し、かたちにしていく場所です。
じっと観察したり、ぼんやり眺めたり、クロワッサンをほおばったりしながら。
思い思いにフロアを巡れば、水の世界のみずみずしい発見が待っています。」 (館内ごあいさつより)
「地球上で青々と繁茂する生命」。生命が生き生きと繁茂する様子を表す「青々」という言葉に由来する名称であること知ったとき、このネーミングの完璧さを構成する点がいくつも連なり脳内を駆け巡った。
文学を感じる言葉の選択。水族館という水や海の青さをシンプルに象徴しながら、字面としての「AO」の繰り返しの心地よさ、△と○を形作る記号的なキャッチーさ、力強さ、完全性。名称に「水族館」が付いていないことは、これまでの施設にはない体験を提供し、水族館の可能性を拡張する姿勢の表明。考えれば考えるほど、非の打ちどころのない、研ぎ澄まされた言語化。
こんな素晴らしいネーミングをつくるのは何者だろうと調べてみると、日本デザインセンターの磯目 健さんだった。そして、ロゴ、サインデザイン、アプリケーションツールのデザインも日本デザインセンターのアートディレクターやデザイナーたちでかためた超豪華布陣だった。なあんだ、そりゃあ、素晴らしいに決まっている。
もちろんネーミングや館内ごあいさつの言葉だけでなく、その空間デザインもこれまでの水族館とは一線を画す洗練さ、展示されている海や川の生き物たちも「こんな洒落たにょろにょろいるんだ」とたいへん素晴らしい体験設計だった。日本を代表するような方々の作品に触れる、体験できることの贅沢さと大切さを学んだ。
この感動を誰かに話したい!と思い、同じ札幌出身の知り合いと雑談をしていると、意外なことにみんなそれぞれに「my favorite aquarium」があるようで興味深かった。雑談で盛り上がっているとそれを見ていた知り合いも「いっとき、水族館にばかり通っていた」と会話に加わって、「淡水系のところは非常にマニアックで面白い」とか「クラゲが好きなら加茂水族館」など、すてきな情報をたくさん教えてくれた。いつも顔を合わせている人の新しい一面も見えたようで、なんだかうれしい気持ちもあったり。来年は加茂水族館に行ってみたいな。深海水族館もまだ行けてないしな。あぁ、楽しみだ。あなたのおすすめの水族館があったら、ぜひ、おしえてください。
AI TAKASHIMA
